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里山の入り口、カソトモの森。そこに関わる人々の話。

宇都宮から車で40分ほど。
清らかな流れの大芦川と荒井川をまたぐと、鹿沼のレトロな中心市街地の雰囲気からガラッと変わって、静かにたたずむ里山に囲まれます。加蘇地区は、鹿沼市の西側に位置する集落です。

この集落で活動しているのが、加蘇地区ふるさとづくり協議会のメンバー。みんなが遊べる場所として、下久我地域に、「カソトモの森」を整備しています。

カソトモの森のはじまり

「青春時代まで、このでっかいふところで過ごしてきたんだ。」
そう懐かしげに語るのは、「カソトモの森」を立ち上げた、加蘇地区ふるさとづくり協議会の小林会長。
下久我で生まれ、幼いころから地域の人に助けられながら生きてきたそう。

小林会長は、戦後まもない頃に生まれ、小学校の頃からこの地域で新聞配達を行なっていたため、地域の人みんなと顔見知り。朝新聞を届けにいくと、新聞を置くところにキャラメルや置き手紙が置かれていたこともありました。中学校卒業後、進学せずに大工になると、「新聞配達の兄ちゃん、大工になったか。大したもんだ!親方に言ってうちを直してよ!」と、たくさんの人が声をかけてくれたんだそうです。20歳まで苦労しながらも、地域の人に励まされてきた経験があったからこそ、この加蘇地区に特別な思いがあるのです。

30代から鹿沼市内に働きに出ましたが、40歳の時に下久我に戻り、古民家を改修して都市の人と地域の人が交流できるなど、地域のために活動を続けています。
コロナ禍を機に、アフターコロナで交流できる環境づくりへ切り替え、長年荒れ放題だった里山の整備を始めました。

地域の入り組んだ難しい問題にも向き合い、どうしてそこまでするのかと聞かれることもあるそうですが、それでも頑張るのは、地域への深い愛があるからこそ。
「ばかじゃねえかと思われるけど、世話になっているこの人たちに恩返しするんだって気持ちで、何とも思わずやってきてんだ。」

生まれ育った加蘇への愛、そこに関わる人への愛をもった会長の笑顔に惹かれ、メンバーが集まりました。
「まずは楽しいところから入らなくっちゃ!」
加蘇地区に子供たちが安心して自然に触れられる場所を作るため、日々草刈りや木の剪定など、協力しながら整備をしています。

カソトモのこれまで

カソトモの森立ち上げから関わっているメンバーの一人である、明るくて元気いっぱいなあけみさん。加蘇地区のパンフレットを作る活動を通して、現在の仲間に出会いました。2020年に、加蘇地区をみんなで自転車で回り、加蘇地区の資源を認識するところから始めました。

里山と聞くと、綺麗な田舎の自然豊かな風景をイメージするかもしれません。しかし、それは山と共存する人の生活があってこそ。人の手が入って初めて、美しい里山になるのです。
「カソトモの森」も、整備し始めた頃は、とても心地よいとは言えないほど、荒れ果てていた場所でした。

「最初はこんなところ入れるのかってくらい荒れていて、恐怖感だけがあったんだけど、綺麗にしたらほんとに気持ちのいいところで。ここでゆっくりしたいなっていう、森の中にいる気持ちよさを初めて体験したかなぁ。ここは自分たちで作り上げた場所、ホームグラウンドという感じがします。

どんなに荒れ果てた山でも、時間をかけて手入れすれば、美しくて心地よい場所になるのだということを実感したというあけみさん。
のんびりとした時間が流れる加蘇の山を眺めながら、嬉しそうに話してくれました。

山が崩れるのを見るのがほんとにつらかったんですよ。
あけみさんに声をかけられて活動に参加したかつみさんは、加蘇の山を守るため、40代後半から林業を始め、針葉樹の山を広葉樹に植え替える活動をしていました。かつみさんは、子供のころから山に行ったり、苗木を背負って職人が働いているのを見ていたそう。
時代が変わるにつれ、林業が産業や生業として成り立たなくなってきたことが原因で、山づくりを依頼しても、採算が合わないからと実現してもらえなくなり、山が崩れるようになりました。

こんな山を残されても、といわれるような山を残されてもと言われるような山を残しちゃだめだよなと。先祖がこつこつこれだけの木を残してきたのに、使えるのに、ひどい状態にしちゃったら申し訳ないじゃないですか。それを伝えるには、自分がやんなきゃと思って。」

林業を続ける一方、地域の子供たちを見ると、自分が思っているよりも、子供と自然との距離が開いてしまっていることへ危機感を感じていた時に、カソトモの活動に出会いました。カソトモの森が、子供たちが山へ入る入り口になればと、活動を続けているそう。
「昔の人の話を聞くと、小学生の時は夕飯の前に薪を拾ってこいだとか、きのこや山菜を取りに行ってくれた話をしてくれるのね。でも、今は子供たちは山にほとんど入らないんです。せっかくこれだけの大自然の中にいるのに。

山は楽しいんですよ!それをまず知ってもらいたいっていうのがありますね。」
そう言ってニコッと笑って、山の魅力について語るかつみさんはとてもいきいきしていて、楽しそう。山が大好きで、この豊かな宝物を子供達にも知ってほしいという熱い想いが伝わってきました。

カソトモのこれから

鹿沼市に造成された分譲地を買ったことで移住してきたひろみさん。参加し続ける理由は、やはり会長の人柄にあるようです。
「みんなが協力してくれないとくじけそうだとか、弱みも見せてくれる。ここは頑張らないとって所をアピールしてくれるから、参加者が自分からモチベーションを挙げていくというのがありますね。

地域の人との交流が深まるのも、カソトモの活動の魅力。自然豊かな加蘇の魅力を再認識するように、話してくれました。
「最近は、ヘチマの種をもらってきて植えたんですけど、会長とかが、ヘチマの成長の様子を、LINEグループで教えてくれるんです。自分だけのものじゃないっていうか、相互の交流が楽しいですね。

加蘇地域の魅力は、何より、広大な大自然。しかし、子供達が自然に触れる機会が少ないことに、ひろみさんも課題を感じていました。
「子供たちが遊ぶのが意外と大変なの!緑はあるけど、遊べる公園がないっていう。ちょうどよく遊べる場所がいろんなところにあればねぇ。田舎なのにもったいないなあと思って。

「カソトモの森」が地域の人や子供達にとって、山の入り口になるように。
そんな思いをそれぞれが抱えながら、メンバーは日々活動していました。

12月には「カソトモの森」オープンイベントがあります。今後は、地域の住民も巻き込んで、みんなで楽しめる里山にできるよう、活動していくそうです。

自分の手で、山を手入れしてみる。そこに暮らす動物たちや、山の恵みに思いを馳せてみる。その小さな経験が、日々の暮らしの見方を、ちょっと変えてくれるかもしれません。
加蘇地区への思いを持ったメンバー、それがカソトモ。
皆さんも一緒に、カソトモとして、里山を盛り上げませんか?

 


この記事を執筆したのは


宇都宮大学国際学部国際学科4年
木津谷亜美さん

加蘇地区ふるさとづくり協議会に関する関連ページ

この記事に関する問合せは

栃木県農政部農村振興課 農村・中山間地域担当 里づくりチーム
TEL:028-623-2334
Mail:noson-sinko@pref.tochigi.lg.jp

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